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NHKは「公共放送」なんです

NHK | Excite エキサイト : 社会ニュース特集

NHKの不要論、民放化、あるいはPPV化という意見は、最近ずいぶん増えてきました。
こういう意見は少ないですし、異論があることも承知で申しますが、自分は、これは日本に「公共心」が薄れてきたことと無縁ではないと考えています。

たしかに、現在のNHKは問題を多く抱えています。特に、金銭がらみの不祥事は一連の騒動の発端となっただけに、根深いものがあるでしょう。受信料だって、どのような形式で徴収するか、そもそも、もっと値下げもできるでしょう。これらを解決してゆくには、NHKを、作り直すくらいの覚悟で取り組まねばならないでしょう。NHKの解体なども、選択肢に挙がることは理解できます。

ですが、それは「公共放送」の必要性とはまったく無縁のものです。

たとえば、警察不祥事があれほど発生しても、「警察不要論」や、「警察の民営化」を口にする人はほとんどいません。NHKの不祥事はきっちりとけじめをつけなければいけませんが、だからといって、それが公共放送が不要だ、という議論にはなりえません。ですが...

「そんな事いったって、見もしない番組に受信料取られるのは納得いかねぇ。」
そういう意見が今、ネットや一部のマスコミなどでも見受けられるようになって来ました。この意見に私は一言申しましょう。

ここで、放送法の日本放送協会の項を紐解いて見ましょう。
放送法第7条 (日本放送協会の)目的
協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行い又は当該放送番組を委託して放送させるとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び委託協会国際放送業務を行うことを目的とする。


NHKの目的は
1.放送は「公共の福祉」のために行うということ
2.「あまねく日本全国において受信できるよう」にすること
3.「豊かで、良い放送番組」を提供すること
4.「放送およびその受信の進歩発達に必要な業務」を行うこと
5.「国際放送」を行うこと
だということです。

これをよく読んだ上で、NHKと民放の番組表を見比べてみると、そのちがいが見えてきます。ちょっと手近にあった12月5日(月)のテレビ欄を見てみましょう。

たとえばPM8時台、民放では、「イタズラ傑作ホームビデオ」とやらが全国に流れ、超能力者が凶悪事件の犯人当てをして、テレビ局がセッティングしただれかさんのお見合いを全国に放送している間、総合は野生のパンダのドキュメンタリーを、教育は福祉情報番組と、健康番組(腰痛の特集)を放送しています。
他の民放番組としては、御老公様が世直し行脚をされていて、、宇多田さんと工藤さんのボウリング云々というのは、内容がよくわからないのでコメントを控えます。

べつに、ここに挙げたような民法の番組が悪いとは言いません。私も御老公は大好きですし。でも、「公共の福祉」だとか、「豊かで良い放送番組」とは、あまりにかけ離れたものが、いくつか見受けられます。たしか、犯人当てはその後映像を使われた学校から抗議が来たと聞きましたし。

見比べてみれば一目瞭然ですが、NHKでは福祉や健康、科学や文化に関する番組が非常に多いことがわかります。はっきりいって、これほどの大量の低視聴率番組を、民放が流すことは考えられないし、絶対に8時台なんて時間には放送されないでしょう。こういった番組を必要とするのは、決してマジョリティではなく、視聴率を稼ぐことは出来ないことが確かだからです。

ブログなどでも「民放とNHKの番組に、もはや大した差は無い」という意見は散見されますが、こうして比べてみれば、明らかに大きな差異があることは明白です。たしかに、民放でも、NHKに勝るとも劣らない良い番組もありますし、NHKが不得意な分野もあります。が、絶対量でも、放送される時間帯などでも明らかな差異があるのは認めるべきでしょう。そしてこれらは、民放ではやはり実現できないということも、多くの人は素直に感じていることです。

さて、ここで、「自分が見ない」から、そんなものには金を出さない、そんな考え方がよいのでしょうか。
自分が通らない道路には自分の払った税金を使うな、自分の子供が通わない学校に税金を投入するな、自分の身内で無いものの医療費に自分の払った税金を使うな、そんな勝手なことをみんなが言い出したら、社会は成り立ちません。こういうことは、、「公共」という名前の下、みんながお金を出し合って、それで賄うべきものです。

道路は談合で無駄金を使うかもしれません。医者はいらない薬を出して薬価をかせぐかもしれません。学校では、さぼり魔の先生が月給泥棒をするかもしれません。それでも、必要とする人がいるから、こういったサービスは税金を投じて続けられます。

受信料というのも、「受信した番組の対価」とは、放送法のどこにも書いてありません。あくまで、先にあげたような目的のため、あくまでも公共の機関を運営させるために、便宜上、テレビを所有する人にその負担を求めたのに過ぎません。(実際、現在はラジオだけを所有している人からは徴収していません。テレビの受信料で賄われています。それはそれでいいか悪いかの議論はあるでしょうが。)

自分は、べつに今の受信料制度が最上のものとは思いませんし、むしろ欠陥は多いでしょう。その制度を議論することは、大いに賛成です。ですが、NHKは「公共放送」なのであって、有料放送なのではありません。そこを履き違えて、タダ見を含めた、受信料を払わない人が3割程度いる、というだけで、「買い手がもう結構と言っている商品」などというのは、まったく公共心の欠如としか言いようがありません。

海外の同胞に日本の声を届ける国際放送は、誰がスポンサーになってくれるのでしょうか。世界に冠たる放送技術を生み出してきた放送研究所も、いったい誰が開発費用を出すのでしょう。そういったことも含めて、「公共放送」の必要性は議論しなければいけないのに、今の議論はまるっきりその線から外れてしまっています。

「自分には必要ない」「自分には必要」、それだけで機関をつぶしたり作ったりしてゆくうちに、この日本がどんな国になるのか、私はそれを危惧します。

P.S. 読み返してみて、少々論点がぼけていたところがあったので、追記しました。(12/23)

P.S.2 下記のブログの記事、ぜひ一度御参照ください。
「NHKの受信料アンケート」 塞翁が馬でしょ(岡目八目様)
by flight009 | 2005-12-11 00:17 | マスコミに思うこと
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