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数字の落とし穴

ひさびさに、「数字の落とし穴」を見つけました。
Excite エキサイト : 社会ニュース
 従業員1000人以上の大企業の80%に、心の病を理由にして1カ月以上休んだ社員がいることが厚生労働省の調査で分かった。1カ月100時間を超える残業をした社員がいる大企業も44%に上った。


この記事を読んでどう思うでしょう?「大企業はやっぱりストレスが多いんだ」とか、「大企業が人を大事にしていない証拠だ」とか、思った人はいませんか?

そう思ったとしたら、あなたは「数字の落とし穴」に、まんまとはまったことになります。

ここのトリックは、「休んだ社員がいる」「会社の」数を調査していることにあります。
当たり前のことなんですが、大企業であれば、社員が多いので、「休んだ社員がいる」可能性は、それだけでも高くなります。純粋に確率の問題だということです。(「へそ踊りを踊れる社員」がいる率だって、同じってことです。)
問題は、「その要因」以上に、その確率が高いのか、ということになります。

では、調査結果を検討してみましょう。
それによると、過去1年間に心の病で休業した社員が1人以上いる会社は全体の3%。会社の規模が大きくなるほど増え、従業員数が300-499人で41%、500-999人で66%、1000人以上は82%だった。
 休業が1カ月以上に及んだ社員がいる割合を同様に規模別でみると、それぞれ35%、63%、80%だった。


「心の病で休業した社員」をモデルで考えて見ましょう。
人数の幅があるので、その中央値をとり、(1000人以上は、刻みを考えて1250人とします。)
400人の会社で41%、750人の会社で66%、1250人の会社で82%の会社に、
該当する社員がいると仮定します。これは、
400人の会社で59%、750人の会社で34%、1250人の会社で18%の会社に、
該当する社員が一人もいない、ということになります。
これから、それぞれの状況で「ある社員が該当する社員である確率」を計算すると、
400人の会社で0.132%、750人の会社で0.144%、1250人の会社で0.137%
と、いうことになります。

こう計算してみると、会社の規模と、「社員個人が、心の病で休業する確率」は、少なくともこの統計結果では、会社の規模によりほとんど変わらないことがわかります。(むしろ、中規模の会社が深刻である可能性がある。)

次に、「休業が1カ月以上に及んだ社員がいる割合」で、考えて見ます。同様に、
400人の会社で0.108%、750人の会社で0.122%、1250人の会社で0.129%

と、なります。

こちらは、確かに会社の規模が大きくなるにつれ、上がってゆく傾向があります。
ただ、「1ヶ月以上休業」することを、許容している、ということが前提ですから、当然、大企業のほうが多くなるのは当然という気もします。

もちろん、過労死をはじめとした種々の問題は深刻です。それに対して、対策が不要であるとか、そういうことを言いたいのではありません。ですが、こういう「誤解」を招くような数字の使い方は、やはりいただけません。これくらいの「分析」をしてから、報道するのが、本当のマスコミの使命だと思うのですが....

いずれにせよ、こういった数字にだまされないよう、気をつけたいものです。
by flight009 | 2006-09-30 00:06 | マスコミに思うこと
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