「卑劣」で片付けちゃいけない

Excite エキサイト : 社会ニュース
特急電車内で女性が強姦された。当時、その車両には40人もの乗客がいたが、だれも犯行をとめようとしなかった。あまつさえ、誰ひとり車掌や外部に通報することもしなかった。信じられない卑劣さ。日本人のモラルは地に堕ちたのではないか。

被害者の方には、正直かける言葉もありません。ただ、それを「卑劣」で片付けるのは危険です。と、いいますか、このような事件は、実のところよく起こっているのです。

社会心理学では「傍観者効果」とかいうそうですが、数多くの人が周りにいたのにもかかわらず、だれも被害者を助けない、という現象は、しばしばおきることが知られています。傍観者効果というのが何なのかは、下記のページに詳しいのでご参照ください。

傍観者効果

<追記>傍観者効果とは、次のようなものです。(我流の解釈ですが。)
○「自分がやらなくてもだれかがやるだろう」「私よりできる人がいるだろう」と、『全員が』思ってしまう(多数の無知)
○「うまく処理できななかったらどうしよう」「むしろ迷惑がられるんじゃないか」と、失敗してそれを他の人に見られることを恐れる(聴衆抑制)
○「何かあっても、わるいのはおれだけじゃない」という、(自分への)いいわけをしてしまう(責任の分散)
つまり、その場に居合わせたのが「一人だけ」なら助ける、あるいは助けてもらえるのに、それが多数であるがゆえにお互いにけん制しあって、結果的に助けてもらえなくなるというのが「傍観者効果」です。
<追記終わり>

今回の事件からわれわれが教訓として得るべきことは、まわりに人がいるほど、逆にその人が助けてもらえないケースが、現実にあるということを、「知識」として持つべきだということです。それは、必ずしもその場にいる人の倫理や勇気の欠如によるものではなく、人間の心理にある「落とし穴」のひとつなのです。

落とし穴にはまらないためには、その落とし穴についてよく知っておくことが大事です。私としては、このような事件があったときこそ、「傍観者効果」のなんたるかを、社会に広く知らしめることこそ、マスコミの使命だと思うのですが。

あるいは、列車の社内の構造にも問題があったかもしれません。傍観者効果というのは、
○自分以外に問題に対処できる人間がいることがわかっている
○自分以外の人が、この問題に対処していないことがわからない
という場合に起こりやすいことですが、座席が林立して、中途半端に見通しの悪い列車の社内というのは、傍観者効果を誘発しやすい構造なのかもしれません。何らかの改善の余地もあるかもしれません。

対処しなかったものを、そうやって叩きのめすのは簡単ですが、それが再発防止に役立つかといえば、私には疑問です。むしろ、「なぜ」を冷静に問い、どうすればそれを防げるかを、精神論ではなく論理的に分析する、ある程度学術的なアプローチが必要でしょう。

いずれにせよ、そういう「基礎知識」すら微塵も感じられない、こんな記事が「報道」として扱われるということに、この国の危うさを感じます。
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by flight009 | 2007-04-26 01:25 | マスコミに思うこと
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