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民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(10)

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(9)の続き

さて、その後の議論ですが、丸山委員の言を借りれば、「本当に茶番」に終始しました。

まず、丸山委員が言っているそばから、水口委員が「生態系」という言葉に食って掛かります。
「生態系等」という言葉については、「外来生物法」にいうところの「生態系等」と、学術的に言う「生態系」とは違うものだということは、議論の中でも何度も説明されることになりますがその後も、水口委員はこの2者を意図的にではないかと思えるほどに混同し、議論を発散させてしまいます。
念のため、法律で使用される用語というのは、よほど明らかな言葉で無い限りはその法律の中で定義づけがされています。そこで、「生態系等」については、
この法律において「生態系等に係る被害」とは、生態系、人の生命若しくは身体又は農林水産業に係る被害をいう。
と、明確に定義されております。

それなのに、学術的な意味での「生態系に対する被害に関する知見が無かった」という別の文書の表現を、この法律でいうところの「生態系等にかかる被害」に対する知見が無いといっていると、水口委員は持ち出し、議論を空転させたりしました。

この委員会の中では、たとえば密放流に関する具体的な目撃情報が示されたり、「放流する稚魚に混入したバスが拡大の原因だ」とする説に対する反証なども数多く提示されていました。それが、このような「空転」のためにほとんど議論されず、提示されただけで終わってしまいました。

一言で言えば、何でこんな人が委員に混じってしまったんだろう、そんな疑問を持ちました。

(続く)
# by flight009 | 2005-07-02 11:36 | 連載-民意と官意と大きな声

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(9)

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(8)の続き

最近、追加のペースがいっそう遅くなって申し訳ないです。公私いろいろありまして...
申し訳ないと思いつつ、続けるだけは続けておりますのでよろしくお願い申し上げます。

さて、全国内水面漁業連合会の橋本氏が、続いて意見します。
橋本氏はきっぱりと、「一尾たりとも日本にいてはいけない」と従来から言っていると言った上で、たとえば10ある池のうち、一つくらいバスでもいいといえなくは無いが、これまで日本では「それが絶対守れない」、だから全面的に禁止するしかないといいます。
今回の法律の枠でも、実効性については疑問があるが、それでもちゃんと管理する方向に向かうのではないかという期待があり、だからぜひとも選定して欲しいと主張しました。

次に、近畿大学の細谷委員が意見します。
細谷委員は、生物多様性は広い概念であるので、野生生物や水産業でさえも視野に入れ、個別のものにとらわれた議論はすべlきでないとした上で、強く規制の必要を訴えます。
バスが日本の在来種に影響を与えている理由について委員なりの見解を述べた上で、バスが「負の効果」を「日本の生態系に全部当てはめてしまった」のが現況だという考えを示し、「このような結末ははなからわかっていた」とします。西欧に比べても多様性の多かった日本の水系のうち、特に重要だと考える4水系のうち、西表島以外はすべて「汚染」されてしまったと嘆き、「生物多様性、水産資源に与える影響についてはもう既に言い尽くした」といいます。
そして、「外来種への取り組み姿勢は、その国の文化のレベルを図るよいツール」だというのが世界の認識だとした上で、「我が国が文化国家であるかの踏み絵そのもの」だと言って締めくくりました。

次に、東京海洋大学の水谷委員が意見します。
水谷委員は、肉食性外来魚の社会的評価に30年来関心を持っているとした上で、法律の「生態系」という言葉に異論を唱えます。すなわち、生物群集に対する影響まで「生態系への影響」とくくってしまっていると。
その上で、配布された報告書にある内容について、たしかに埼玉県のあるため池では、生物群集への影響があることを示しているけれども、そうするとこの法律は「明らかになっている小さなため池における生物群集への影響を全国の湖沼の生態系に当てはめようという話」だとし、それははっきりいって「無理です」といいます。
そしてそもそも法律が「間違ってつくられて」しまっていて、「何か間違ったことを言ってもみんなで言えば本当になるみたい」に事態は進行していると主張します。
そして、これまで明らかになっているのはせいぜい小さな湖沼レベルの話で、「全国の湖沼という話ではない」として、地域を限定して規制したり、輸入などを制限するのはともかく「何が何でも全国一匹たりともという話みたいになっていくような対応の仕方は非常に問題が起こるし、法律的にも問題が出てくるだろう」と締めました。

最後に、東京海洋大学の丸山委員が意見しました。
丸山委員は、もう、言う事が残ってないようないようだけれど、と、前置きした上で、この問題は「いろいろな不幸ないきさつがあって、非常に混乱してきている」と言います。水口氏の発言もそうだが、「密放流」や「生態系」という「言葉」をめぐってこういった「議論」が行われてきたが、それから「新しく何が生まれたのかは全然わからない」といいます。
そして、「生態系」というのは、そういう「概念」でとらえれば生物界で起こっていることを、丸ごとに近い形で理解できるのではないかという考えで提唱されているもので、「実在でも何でも」ないから、法律とからめる必要は無いのに、これまで、そういう議論が多かった。非常に嫌だったといいます。
そして、こう結びました。
「今までそういう形で落ちついた話し合いができなかったことを、この場を利用して、本当に具体的に、ただ言い逃れでそういう言葉を利用するのではなくて、今我々が持っている知識をどう生かして、本当にお互いに納得できる情報をどれだけ増やすかという格好で、なるべく具体的にやっていきたいと。それがなかったら、この会議は本当に茶番だと私は思っています。」


.....娘が泣き出しました。すいませんが、今日もここまでで。

(続きます)
# by flight009 | 2005-06-11 10:01 | 連載-民意と官意と大きな声

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(8)

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(7)の続き

さて、続いて「全日本釣り団体協議会」の來田氏から、「外来魚が日本の在来魚に大きな影響を与えておる」ことは共通認識であり、現状、全国に散ってしまったバスを管理することが「不能」であるとした上で、それでもバスを「完全否定」することが、反対される原因だと指摘しました。その上で、釣り人を含めて「納得しながら同意しながら整理整頓」する方策を探すことが課題だと主張します。
そして、「生命体」である、釣られた魚たちへの感謝の気持ちを持つのが釣り人の心であり、この場が、その中で秩序を作ってゆく場であって欲しいしと述べ、自分たちが「監視」している限りでは密放流などは確認できないし、環境破壊などその他の原因もあるはずなのに、すべてバスのせいにするなら、釣り人の説得は出来ないと主張しました。

それに対して、「滋賀県立琵琶湖博物館」の、中井委員が、來田氏の意見に対して「大分重なるような考えを」持っているとしながらも、バスは「非常に特別な」存在であるとします。
その理由として、「これだけ利用する人たちがいながら生態的影響が懸念される」こと、そして、食魚性よりも旺盛な繁殖力があることだとします。
その上で、この法律は管理が必要な生物について管理しようというものであって、(在来種や保護対象でもと断った上で)シカやクマ、カワウといった例を挙げ、「悪いのは我々人間」であるが崩してしまった自然のバランスを保つため、「人間が天敵がわり」にならないといけないところもあるとし、大変気の毒ではあるけれど、「心の痛みを覚え」つつ、「管理してゆく」必要があると主張します。

(続く)
# by flight009 | 2005-05-28 17:37 | 連載-民意と官意と大きな声

すばらしい提案

Excite エキサイト : 国際ニュース

沈次官補は、靖国参拝を「日中双方にとって、もっともセンシティブな問題」とし、「日本政府が非常に賢明な姿勢をとって参拝をやめることができれば、日中関係が抱える多くの問題を容易に解決することができる」と述べた。


すばらしい提案です。

「日中関係が抱える多くの問題を容易に解決することができる」というのでしたら、
○尖閣諸島の領有権が日本にあることを認める
○沖ノ鳥島が島であり、日本の領土であることを認める
○日中の中間線を日本の主張どおりに認める
○東シナ海のガス田の開発を中止し、共同開発に切り替える
○日本の歴史や公民の教科書について口出ししない
○台湾の要人が日本を訪問することに文句を言わない
○日本の国連常任理事国入りも支持してくれる。少なくとも反対しない。

くらいのことは期待できるんでしょう。

そのためでしたら、「首相の参拝」を、控えることくらいはまぁ、我慢してもいいんじゃないですかね。戦死者の御霊も、それならわかってくれるでしょう。そのぶん、われわれ国民が、彼らをしっかり祭ればよろしい。

政府は、中国に確認してみたらいいと思います。仮にも一国の政府高官の発言、そう簡単に左右するような恥ずかしいことはしないでしょうね、と。まさか、ね。

会談をドタキャンしたのだって、きっと止むにやまれぬ理由があったんですよね。まさか、ね。「中国で急な公務が発生したことが主な理由」だと、はっきりおっしゃっているんですから。まさか、そんなことを撤回するような、恥ずかしいまねはしないでしょう。

まぁ、これを撤回するのでしたら、中国という国に対する考え方、相当考えないといけません。言ったことに責任を持つことと、約束を守ること、友好の大前提ですから。
# by flight009 | 2005-05-24 22:30

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(7)

民意と官意と大きな声 ~外来生物法のパブリックコメントから~(6)の、続き

それで、この会議の中身なんですが...

まず、私がこうあって欲しかった形というのは、
○「生態系等」に対する被害について、科学的なデータを出す。
○その妥当性について議論する
○その結果、「生態系等」への被害が否定できないのであれば、指定する。そうでないなら、指定しない。

と、わりと科学的な議論を期待していました。

で、第一回の会合はどうだったかというと、
第1回 オオクチバス小グループ会合 議事録

まずは、お役人のほうから、法律の概要と、考え方、そしてたたき台としての「オオクチバスに係る情報及び評価(案)」について説明があり、その後、各委員の自己紹介をしつつ、各委員のスタンスが述べられます。

まず、日本釣振興会の高宮氏から、法律の趣旨には賛成であり、海外に比べてむしろ遅かった感もあるとの感想が出ます。
しかし、まず、「外来種」というのはバス以外のも多数いて、むしろバスは少数のほうであり、これらを回復させるためには、人為的な手を加えることよりも、「自然そのものに決めさせるべきというのが本筋」ではないか、そのためには、バスの食害や密放流について「真実に基づかない憶測で情報発信されている事が余りに多」いので、まず調査を重ねて「実態把握」することが必要だという主張がなされます。

次に、瀬能委員(神奈川県立生命の星・地球博物館学芸員)より、高宮氏の主張に対して、バスが「他の外来生物とは比較にならないほど大きな影響を与えているという認識」であると表明した後、すでに多くの調査がなされ、食害や密放流等についてはすでに実例が挙がっており、「特定外来生物に指定」すべきであるとの主張がなされました。

(とりあえず、続く)
# by flight009 | 2005-05-15 23:45 | 連載-民意と官意と大きな声